9月のある土曜日。
一哉くんは久しぶり(本当に久しぶり!!)にお休みが取れたのであたしは前の日から一哉くんのマンションに遊びに来ていた。一哉くんがお休みってこともあって、というか一哉くんのせいでいつもより大分遅めの朝食を2人で食べていたら。
「ああ、言い忘れてた。この後、出かけるからな」
「え?今日はお休みじゃなかったの?」
「休みだぜ」
一哉くんの話が全く見えなくてあたしは首を傾げるばかりだった。
「…よくわかんないけど、それならご飯食べたらあたし帰るね」
「は?何を言ってるんだ?お前も一緒に出かけるんだよ」
「ふぇ?そんなの聞いてないんだけど」
「だから言い忘れたといっただろ。とにかく出かけるからな」
一哉くんは平然と言い放ったけど、まさか自分まで連れてかれるとは全く思わなかったあたしはただただ驚くばっかりで。
「ねぇ、どこに行くの?遠いの?」
「そんなに遠くはないが俺の車で行くからな」
「え!!一哉くんの車に乗せてくれるの?」
「ああ。もちろんナビシートに座れよ」
あたしは『久々に一哉くんの車に乗って2人で出かけられる』ってことが嬉しくて、『どこに行くの?』っと言う質問をはぐらかされた事もその後に一哉くんがお得意のあの意地悪そうな笑みを浮かべたことに全く気付かなかった。
「…ねぇ、ココって……」
「ああ、見ての通り祖母が贔屓にしている老舗の呉服屋だが?」
「…なんであたしがこんなトコに連れてこられたワケ?」
「正月にお前の振袖を買ってやるっと言っただろ?今日はそれを注文しにきたんだ。」
「ええ?あの話、本気だったの?」
「とにかく店に入ろうぜ」
呆然としていたあたしは一哉くんに引きずられるようにしてお店の中へと入った。
「あら、2人ともやっと来たわね。もう、待ちくたびれちゃったわ」
お店に入った途端、あたしと一哉くんは思わずフリーズした。なぜかあたし達を出迎えたのはお店の人ではなく一哉くんのお母さんでした。
「…母さん…なぜあなたがここにいるんだ?」
一哉くんが頭を抱えてる姿なんてはっきり言って初めてみたかも。
「昨日、お母さんがむぎちゃんと一哉が振袖を買いに言ってたのをきいたから来たの」
笑顔で答える一哉くんのお母さんに対し、一哉くんの表情がどんどん険しくなっていくのがあたしにも手に取るように分かった。
「一哉の卒業式以来かしら?久しぶりね、むぎちゃん」
「はい、お久しぶりです!!一哉くんのお母さんも相変わらずお忙しそうで」
「あら、『一哉くんの』は要らないわ。どうせなら『お義母さん』って呼んでちょうだい」
「
母さん…」
「あら何か問題でもあって?」
「……」
「それより一哉、どうして私にむぎちゃんの振袖のデザインをさせてくれないの?」
「…金を出すのは俺なんだぜ」
「それだけじゃないでしょ?ど〜せ一哉のことだからむぎちゃんを自分好み染めたかったんじゃないの?」
「…まぁそれも無いとは言い切れないけど、それだけじゃないぜ。それにむぎは俺の彼女なんだから俺の好みで振袖を作ったて問題ないだろ?」
「まぁ、一哉ったら独占欲が強いんだから。独占欲も大概にしないといつかむぎちゃんに愛想尽かされちゃうわよ?」
久しぶりの親子の再会のはずなのにって思っちゃうくらい2人の話の中心はあたしの話で。
その後もそんな感じで一哉くんと貴美子さんがあたしの振袖をめぐって何故かヒートアップしてくのであった。
<後編>に続く。
ええっと、予想以上に長くなったので急遽、前後編に分けました。後編は明日というか今日の夜に書く予定です!!